「世界水の日」:チリ豚肉産業の各企業は水を生態系に還元するための努力を続けている
1992年、国連はリオデジャネイロで開催された地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)で提案、翌年3月22日を「世界水の日」と定めた。今年国連は「水の価値評価」キャンペーンを掲げ、地球上の全ての人間が水という重要な […]
1992年、国連はリオデジャネイロで開催された地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)で提案、翌年3月22日を「世界水の日」と定めた。今年国連は「水の価値評価」キャンペーンを掲げ、地球上の全ての人間が水という重要な資源に与える環境、社会、ビジネス、文化的価値についての意識を高めることを目指している。
チリの食肉生産業界は元々農業や鉱業など他の大規模産業と比べると水資源の使用は少ないが、もちろん一定の需要はある。チリ食肉輸出協会(ChileCarne)のダニエラ・アルバレスサステイナビリティマネージャーは「この20年、鶏や七面鳥、そして豚の生産は効率的に行われるようになってきました。水の使用を極力効率よく使用できるよう投資を行い、また使用した後の水の処理についてもリサイクルし、生態系に還元するためのシステムを構築してきました。」と話す。
チリ環境省の統計によると、循環経済は多くの面で水の効果的な使用をベースとする部分が大きく、環境面において国全体で温室効果ガス排出量の33%削減に繋がっているという。リサイクルや新技術に関わる仕事に携わる業務も増え、経済的には国のGDP3-4%の節約に相当するという。
農業部門においては糞尿の処理水の継続的な改良によって有機ミネラル肥料の生産に活用し、循環経済に組み込むことことが重要と考えられている。窒素、りんなどの栄養素をリサイクルし、カリウムやその他の成分を土壌や水に還元することで生態系のバランスを戻すことに貢献できる一方、再生可能エネルギーが生成され、温室ガス効果排出を大幅に削減できるのである。
水の有効な使い方を推進する業界のイニシアチブ
養豚業界で現在実施されている循環経済活動のひとつが豚の糞尿を灌漑用水と混ぜ、肥料とすることである。窒素、りん、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどマクロ栄養素やミクロ栄養素を土壌に取り込むことができるだけでなく、土壌の質と構造を改善するために重要な有機物を提供できるというメリットがある。
チリの養豚会社は地域コミュニティとのつながりを強化し、養豚セクターと隣接する農家にこの価値ある肥料を提供するという協力体制を整え、灌漑肥料の配布システムを確立した。
現在、排出された糞尿は100%灌漑肥料として使用され、自社の畑や近隣コミュニティー、養豚場に隣接する農家などに配布されている。農産物の生産農家にとっては水の提供だけでも助けになるが、さらに有機物や栄養素が含まれていることで土壌の肥沃度合や保水力を改善するため非常に役立っている。
ダニエラ・アルバレス氏は「チリの養豚業界の76%が活性汚泥プラントやバイオダイジェスター、ワームフィルターなど糞尿処理の技術を有しており、その工程の中で水も効率よく使用されています。」と説明している。
一方家禽生産についてはさらに効率的に水を使用している。鶏は木屑やおがくずの上で飼育されるため、豚の飼育とは異なり養鶏場では水を使用していない。このため養鶏に関してはチリ全体でも年間180万立方メーターととうもろこし畑360ヘクタールに水を撒く程度にとどまっている。量が少ないとはいえ、業界はさらなる改善を意識している。鶏肉生産工場に関しては使用する水は再利用するために処理されており、灌漑に使用される割合は低い。