チリ初の臭気排出基準:養豚業界にとってのチャレンジ

2023年2月23日

2023年2月6日(月)、国内の養豚業に対して臭気の排出を規制するチリ初の環境基準が発効した。これは、2014年からチリ環境省(MMA)が実施している臭気制御管理戦略の一環で定められる初めての基準である。 これは、養豚場 […]

202326日(月)、国内の養豚業に対して臭気の排出を規制するチリ初の環境基準が発効した。これは、2014年からチリ環境省(MMA)が実施している臭気制御管理戦略の一環で定められる初めての基準である。

これは、養豚場からの排出を予防し、制御することを目指した国際水準の臭気基準である。このテーマは、同産業が、発生地からの排出削減を可能にする技術的改善策の策定を通して、既にその履行を進めてきたものである。適用範囲は、チリの国土全体で、750頭以上の家畜を飼養する養豚場に適用される。監督および監査は、環境監督官の責任で行われる。

MMAの騒音・発光・臭気部臭気課課長のダニエラ・カイマンケは、「この基準策定のために環境省が行った診断から、チリにはいくつかの固有の特徴が存在すると言えます。主に、小規模の養豚場と大規模の養豚場の間に大きな差があることです。従って、発効した基準では、養豚場の規模に応じて分類されたカテゴリー毎の“技術レベル”に達することに焦点を当てた要件が定められています。詳しく言うと、小規模養豚場は、糞尿池の分野でその排出削減を行わなければならず、中規模養豚場では、糞尿池と堆肥化場の分野で、一方、大規模養豚場では、その大半ですでにこうした対策が取られているので、さらに一歩進んだ対策が求められます。つまり、最大臭気濃度8 OUE/㎥P95に抑えられる排出削減へと進みます。これには、他の分野での削減も含まれることになります。多くの場合、既に実施されている技術に追加して対策を行うことになります」と述べている。

チリカルネのサステナビリティ部長ダニエラ・アルバレスは、「公布された排出基準は、世界レベルでもっとも厳しい基準の一つです。それは、喜びであり、多くの人々の願いであるとしても、80%が中小生産企業で構成された細分化セクターにとって多大なる努力を意味します。そして、高品質な食品を持続可能な方法で生産し、経済的な価格で、絶えず増加する人口に提供していくという課題があるのです。新たな基準は、既存の養豚場に臭気排出の削減を義務付け、新たに建設を希望する新規養豚場にはさらに厳しい制限を課しています」と指摘する。

1999年以降、養豚業界は、クリーン・プロダクションの対策や取り組みの実施を通して、チリの養豚場からの臭気排出を管理することに努めてきた。並行して、農場レベルで不快臭発生の主たる原因である糞尿の取り扱いのため、先端技術の採用に投資を始めた。現在、国内養豚場の80%は、糞尿の先進処理システムを有している。例えば、活性汚泥工場、バイオダイジェスター、ミミズ・コンポスト、ホットベッド、固形物バイオ安定である。これにより、養豚場での臭気排出率を95%まで削減することが可能となった。

これに関して、ダニエラ・カイマンケは、「基準の設計は技術に焦点を当てています。前述のことから、技術の導入や運用面での優れた取組が重要な役割を果たします。養豚場での臭気低減技術がうまく運用されず、維持されなければ、期待した軽減効果は得られないでしょう。それゆえ、基準の実施により、臭気低減技術の運用フォローアップをし、近隣住民への不快臭問題を避けることが期待されます」と指摘している。

「産業としてこれまでこうした重要な進歩が得られたのは、公的部門のサポートに加え、食肉輸出協会チリカルネがチリ養豚協会アスプロセルと共に、農業省の“コンシャス・オリジン・チリ”プログラムに参加した2018年から行ってきた取り組みによるものでもあります。“コンシャス・オリジン・チリ”は、国内養豚業にとって初のサステナビリティ基準を可能にしたイニシアチブで、水およびエネルギーの効率化、カーボンフットプリントの定量化、地域社会とのつながり、不快臭排出管理などの17のサステナビリティ項目が含まれています。そして、目標達成のための技術援助や研修を提供しながら、この種の基準の導入と実施について生産者をサポートするものです。これまで130以上の施設が既にプログラムに参加していて、まもなく認証されることになります。今年は、国内および国際的に様々な市場で競争力があり持続可能な農産食品産業の発展を促すこのイニシアチブにもっと多くの生産者が参加し、さらに進展することを期待しています」と、アルバレスは指摘した。

アスプロセルが行った調査によれば、企業にとって基準実施の予測コストは、合計8,200万ドルに達するだろうとしている。同協会は、4つの基本方針に基づく、履行へのサポート戦略を策定している。

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