2022年豚肉産業が対応すべき課題

2022年5月30日

ここ数十年間、豚肉産業は、活動に影響を及ぼし得る予期せぬ課題に直面した際、多大なレジリエンスを示してきた。病気、経済危機、政治的・社会的偶発事案は、対応することのできた状況のいくつかだ。困難を避けることにはならなかったが […]

ここ数十年間、豚肉産業は、活動に影響を及ぼし得る予期せぬ課題に直面した際、多大なレジリエンスを示してきた。病気、経済危機、政治的・社会的偶発事案は、対応することのできた状況のいくつかだ。困難を避けることにはならなかったが、うまく乗り切ることができた。2022年、そうした状況は、まとまり、結びつく様相を呈しており、業界全体の対応力、適応力が試される。

 

現在の世界状況は、豚肉産業にとって様々な困難な状況を示している。つまり、インフレ、原材料価格の高騰、政治的・社会的紛争、アフリカ豚熱(ASF)のような病気が、対応を迫られる課題となっている。こうした課題はお互い結びつき、さらに複雑化していて、直接的または間接的に、生産コスト、産業の安定や予測に影響を及ぼしている。それゆえ、競争力を保ち、チリ産豚肉のより良い相手先マーケットをより多く確保するため、各々の課題がどのように影響するのかを分析することが鍵となる。

 

「業界としての大きな課題は、こうしたすべての変化に対応できるようにすることです。しかし同時に、農村地域の発展の原動力として引き続き我が国の発展に寄与し、益々持続可能な産業として発展し続ける長期的な戦略を保つことです」と、可能性のあるシナリオを分析する際に、チリカルネ会長のフアン・カルロス・ドミンゲスは指摘した。

 

続いて、産業の展望を予測するため考慮すべきキーポイントについて、掘り下げて分析する。

 

現在および予測されるインフレ

世界的に、今世紀で前例のないインフレが起こっている。2022年4月に国際通貨基金(IMF)は、今年の世界レベルのインフレ率が平均7.4%になり得ると予測した。新興国および途上国の経済は、8.7%のインフレとなり、もっとも大きな影響を受けると予想される。先進国の経済では、5.7%のインフレ率になるだろう。

 

オンライン・セミナー「世界豚肉四半期見通し」において、ブローバル・アグリトレンズCEOで著名なアナリストであるブレット・スチュアートは、食品の世界指標は、パンデミックの始まりから現在に至るまで上昇を続けていて、食肉は上昇がより緩やかであったものの、豚肉は、この2022年、価格が上昇するだろうと指摘した。

パンデミックの中で課された規制は、生産の低下やロックダウンによって、製品の不足をもたらし続けている。中国の港のように、通常輸送の中断が、輸送コストを上昇させており、それに原油価格の高騰が加わり、食品やその他製品の価格に、直接的に影響を与えている。

 

成長についてみてみると、ブレットは、2023年の世界予測は、2021年のそれを維持し、3.6%になると指摘している。成長予測が6.1%だった2019年とは大きな違いである。

 

豚肉の価格については、米国、メキシコ、EU(ヨーロッパ連合)、ブラジルは、よく似た価格で推移し、中国がそれより高めになっていることが指摘できる。さらに、メキシコは、豚肉の輸出について安定し、かつ、増やしている国とみなすことができる。一方、米国は、主にカナダからであるものの、全般的に豚肉の輸入が増えている。

 

原材料の高騰

原材料の価格は、生産量が少なく、需要が増加し続けるため、今年、極めて高いレベルが続くだろう。トウモロコシと大豆は、先行き不透明な状況である。黒海からそれらを輸出できる確証はないのだ。それに加えて、トウモロコシはバイオ燃料の材料なので、その需要は高まり、食料としての調達は、さらに不透明感が増すだろう。

 

一方、ブレット・スチュアートが指摘するように、気象は、原材料価格高騰の追加的要因となる。同アナリストは、南米で深刻な干ばつと米国で極めて暑い夏をもたらし、トウモロコシの価格上昇を引き起こしている“ラ・ニーニャ”といった現象の影響を強調している。国連食糧農業機関(FAO)は、収穫の減少をもたらす“予測不能で、好ましくない”気候であると報告している。

 

ロシアとウクライナの世界的影響

この両国間の衝突とその後のNATOによるロシア制裁が、経済面にマイナスの結果をもたらしている。石油や天然ガス、穀物、肥料は不足し、紛争の開始から現在に至るまで価格は上昇している。グローバル・アグリトレンズのCEOは、戦争の結果、EUでは、食物、エネルギー、肥料、電気の価格に大幅なインフレが起こっていて、「戦争は、コモディティ商品の価格上昇に影響を及ぼしている」と指摘している。

 

2021年、ラボバンクのデータによると、ロシアとベラルーシは、世界のカリ輸出の40%以上を占めている。さらに、ロシアは、世界のアンモニア輸出の22%近く、尿素の14%、第一リン酸アンモニウムの14%近くを占めている。これらはすべて重要な肥料であり、現在、入手が難しくなっていて、コスト高と生産チェーンのベースに危機を招いている。

 

アフリカ豚熱(ASF

ASF発生の脅威は、絶え間ない。ブレット・スチュアートは、「イタリアまたはドイツで起こったものの、ヨーロッパにリスクがあるだけではない。なぜなら、常に、他の地域で孤立したケースが起こっており、ハイチもしくはドミニカ共和国で何が起こっているのか明確な情報はない」と指摘している。

 

同じ意味において、スチュアートは、重要なことは、厳しい予防策を保ち、既に発生した国々によって実施されたことを分析することであると強調している。予防しなければならないが、同時に、産業にとって衝撃となるマーケットの遮断を想定し、価格や生産が継続される家畜数の調整についてどのような可能性があるのかを定める緊急時対応計画を準備しておかなければならない。

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